「――さん、俺…」
「いいんだよ。俺も――くんのことが好きだから」
そう言って――さんは俺を抱きしめた。
うれしかった。
この気持ちを告げてはいけないと隠していたから。
だって、――さんは…
そう思い、手を伸ばした。
「…あれ?」
目が覚めると、何故か手を伸ばしていた。
何かを掴もうとするように。
「またあの夢…」
アリババは寝起きの頭で少し思い出した。
幼い頃から時折見る夢―。
幼い頃は朝目が覚めると覚えていないことも多かったが、最近は覚えていることが多くなった。
覚えているといっても顔や声はおぼろげだ。
ただ、どこかアラビアンな感じの建物や服装が印象的で、剣や魔法があったりとファンタジーだった。
何故こんな夢を見るのかは17歳になった今でもわからない。
「あ、朝食と弁当作らないと!」
亡くなった母さんや俺を引き取ってくれたシンドバッドさんにも言っていないことだった。
最近その夢をよく見るようになったような感じがする。
「…っと、まずはシンドバッドさん起こさないとな」
何かが 始まる 音が した―