「ヴィクトル」
「勇利」
バンケットが終わり、ホテルの部屋でくつろぐヴィクトルを見て、ふふっとなってしまう。
嬉しいのだ、またヴィクトルとスケートを続けられることが。
「どうしたの、勇利?そんなに笑って」
「だって、嬉しいんだ。またヴィクトルとスケートができるってことが」
「俺も嬉しいよ。…ショート終わった後のあの絶望感に比べたら」
「うっ…ごめん…」
それを言われると耳に痛い。
そしてふと今のヴィクトルの言葉から気になる一言があった。
「…絶望感?」
「…俺は競技者ではない自分が勇利を引き留めることはできないと絶望したんだ。俺はあの時にはもう引退する心積もりしていた。コーチとして勇利の傍にいたいって思っていた」
ヴィクトルがそんなことを考えていたなんて知らなかった。
競技復帰したいと思っていたのだと、僕が感じていたのは真逆だった。引退するつもりで、僕のコーチを続けて傍にいるつもりでいたのだと、僕は今初めて知った。
「僕、知らなかった」
「…ねぇ勇利、勇利はどうして引退しようとしたの。あの時答えてくれなかったこと教えて?」
あの時、ショートが終わったその夜に僕はヴィクトルに告げたのだ。
「自分は引退して、俺には競技を続けろなんてよく言えるよね!?」
ロシア大会でヴィクトルが傍にいない大会を経験し、自分はもうヴィクトルがいなければ満足に滑れないことに気づいてしまった。
そして、楽しそうに他の人の演技を見るヴィクトルに、僕は何も言えない。今にでも競技復帰したいと思っているのではないか。ファイナルまでと区切りをつけていたのはヴィクトルだったはずだ。
僕たちはファイナルの後の事を話していなかった。特にヴィクトルから聞かれることはなかったし、「グランプリファイナルで優勝させるぞ!」という言葉通り、ファイナルまでのコーチだと僕は理解していた。
その先は別のコーチをつけるかどうするかは悩んではいたが、元々ラストシーズンをかけていた僕にとって、少し引退が早まっただけだ。
それなのに、ヴィクトルは何で怒ってるの?
「…ねぇ、勇利。何で?何で引退するなんて言うの」
「何でって…。元々ファイナルまでって言ってたのはヴィクトルだったでしょ?」
「確かにファイナルで優勝させるって俺言ったよ。でも、何でそれが勇利が引退するってことに繋がるの!?」
「………」
「勇利………分かった、フリーが終わったらそれぞれ自分で結論を出そう。俺がどうするかは俺が決める」
「………分かったよ」
それでも、僕の答えは変わらない。でも、ヴィクトルは競技復帰に前向きなはずだ、そう信じてる。
そう、僕は信じていたはずだった。
「…僕は、ロシア大会でヴィクトルがいないと満足に滑れなくなっていたことに気づいたんだ。元々ラストシーズンだと思って、ヴィクトルと一緒にいれるのはファイナルまでだと思ってたから、全日本以降今の状態のままスケートを続けるのは無理だって…」
「…俺も、フリーの時傍にいることができなくてごめん」
「ううん、マッカチンのことがあったんだから、僕がしっかりしないといけなかっただけだよ」
「ラストシーズンって考えていたなんて知らなかった」
「僕、空港で引退までお願いしますって言った…」
「…ラストシーズンだとかファイナルで引退だとかそういう意味には聞こえなかったよ」
あれ?そうかな…。僕としては少し遠回しでも言ったつもりだったんだけどな…。ああ、だからショートの夜に驚いていたのか。
「えっと、ごめん?」
「…マリが以前、勇利は本当に大事なことは誰にも言わずに決めるって言ってたし、今回実感したよ」
「真利姉ちゃん…」
「勇利、本当にロシアに来てくれる…?いや、来て」
「行くよ。ヴィクトルと一緒にスケートするために」
「うん…ああ、ダメだかっこ悪いな俺」
「そんなことないよ!ヴィクトルはいつもかっこいい!」
ヴィクトルがかっこ悪い時なんてないよ。居間でくつろいでる時もお酒飲んで酔っ払ってる時も。
勇利もかっこいいよ、と僕に微笑むヴィクトルはとても綺麗でかっこよくて…いつも見惚れてしまう。
「…ねぇヴィクトル、気になってたんだけど、僕のコーチ続けてもらうのって…」
「勇利のコーチは本当に勇利が引退する時まで俺だけだから。その後も…ずっとずっと、傍にいろ」
「…うん、ヴィクトルもずっと僕の傍にいてほしい」
ヴィクトルは僕を抱きしめてそう言った。僕も、ヴィクトルの傍にいたい。
「もうおまえがいないと生きていけない、勇利」
「…大袈裟じゃない?…あ、でも僕もヴィクトルがいないとダメかも」
「勇利…」
ヴィクトルの顔が近づいてきて…。
ファイナルが終わったこの夜、僕たちは恋人になったのだ。
長いキスに溺れそうになる。今までふとしていたような軽いキスではなく、こういうことする時にするだろうキス。
「ナショナルまで時間はそう多くはない。だから勇利、今は入れない。ナショナルが終わったら、必ず」
「………うん」
初めてだってことは言ったけど、かなり恥ずかしかった。でも、スケートを大切にしているヴィクトルだからこそ信頼できた。
「そのかわり…少しだけ触らせて…?」
「……あっ…んっ」
唇からスルスルと首筋へ、キスをされただけで反応してしまう。下準備をしながらも触れるのにどこかざわざわする。
気付いたら胸へといき、甘噛みされる。普段なら少し痛いかもしれないそれに感じる自分をどこか冷静に見ていた。
「ヴィクトル……」
「痛い?」
「ううん……えっと…」
「ふふ、気持ちいいんだね。よかった」
恥ずかしくて言えないと思ったら、ヴィクトルはちゃんと分かってくれたらしい。よかったと笑うヴィクトルにもっとキスがしたい、先へ行きたいと思った。自分にとっては未知の世界なのに、恥ずかしいけれど終わりたくないと思う。
ヴィクトルだから、ヴィクトルじゃなかったらこんな気持ちになんてならなかった。
いつの間にかバスローブは脱がされ、ほとんど裸に近い状態になっていた。ヴィクトルも脱げていると言ってもいい程のはだけ具合だった。
「…勇利、指入れるところまでしても?」
「えっ…と……」
「ダメ?こわい?」
「…こわ、くはないと…思う………ヴィクトルがしたいように、していいよ?」
「…勇利、俺を煽るものじゃないよ。…大丈夫、気持ちよくなるだけだよ」
「…あぁっ!…んんっ」
そう言ってヴィクトルはさっきから柔く撫でていた僕のモノを少し強めに触り、いつの間にかベッドサイドに置かれていたローションを取り出して手に垂らしていた。
ねぇ、ヴィクトル…やっぱり用意周到すぎじゃない?僕だって男だ。初心だからってこういう時の知識がないわけじゃない。
「んっ…」
「…勇利、痛かったり苦しかったら言って」
そう言ってヴィクトルは窄みをくるくるとローションを追加で垂らしながら撫でる。そうしてゆっくりと指を中へ入れてくる。
「…んんっ」
「勇利、苦しい?」
「…だ、いじょ、ぶ」
想像より苦しかったり痛くはなかった。ただ引っかかりは少しある。しばらくそのまま待っていると中が慣れてきたのか少しじれったくなる。
「…思ってたよりは大丈夫そうだね。少し動かすけど大丈夫?」
「うん…大丈夫だよ」
ローションの音とかで出し入れする度にくぷくぷと音がしている。恥ずかしい。前も触ってほしい。
「………勇利、前触ってほしい?そろそろイキそうだね?」
「…ぅん…あっ」
少し慣らして大丈夫そうだと、ヴィクトルは指を抜いてしまった。そうだ、まだなんだった…本当にヴィクトルとするのはナショナルが終わってから。
ヴィクトルは自分のモノを取り出し、僕のと擦り合わせた。かなり気持ちがいい。
「あぁっ…んぁ…!」
「…っく、勇利、イキそう?」
「んんっ!ゔぃくとるぅ…!」
「っ…ふふ、その蕩けた顔とてもいいね、かわいいよ勇利」
そう言うヴィクトルのその顔もすごく…かっこいい。
「…あ、イくっ…あぁっ!」
「…っ!…」
ヴィクトルとほぼ同時にイくと、我に返ってくる。ヴィクトルの醸し出す雰囲気にのまれてしまった感はあるが、ヴィクトルでも僕に興奮してるんだなと実感して顔が熱くなる。
「勇利、気持ちよかった?」
「………うん…ヴィクトルは…?」
「…とても気持ち良かったよ…ナショナル終わった後、楽しみだね…?」
そうだ、こんな気持ちよかったのにまだ先があるのだ。
その後、またシャワーを浴びるのにヴィクトルが乱入してきたりといろいろあったが、もっと恥ずかしくてもしかしたらヴィクトルが萎えてしまうのではないかと思ったりしたが心配なかったようだ。恥ずかしいのは恥ずかしいけどね…!
「…ヴィクトル誕生日おめでとう、っと…。あと3分」
ロシア時間で25日を迎える日本時間午前4時前。
ショートがあるため、早く寝て早く起きる手段を取った。ヴィクトルには少し怒られるかもしれないが、睡眠時間はいつも通り取ってるから大目に見てほしい。と思ったところで。
「…あっ!…ヴィクトル?」
『…こんな時間に起きてるなんて悪い子だね』
「睡眠時間はしっかり取ったよ?…ヴィクトルこそ大丈夫?」
『ああ、さすがに復帰戦ということでいつもよりインタビューが長くてね、ヤコフが止めてくれたけど』
「うん、明日まだフリーあるもんね。…ヴィクトル、誕生日おめでとう!」
『ふふっ、ありがとう、勇利。こうやって勇利に祝ってもらえてうれしい。フリーもがんばるよ。もちろん、勇利もショートがある』
「うん、僕もがんばる」
ロシア大会の二の舞を演じるわけにはいかないのだ。
「ロシア大会の時はどうなるかと思ったが、全日本は大丈夫だったな」
「うん、ヴィクトルと一緒にスケート続けるってなったからかな」
「…そうかもな。というかお前らとっくに恋人関係だって思ってたわ」
「ええっ、何でさ。西郡だってそうじゃないって知ってたんじゃないの?」
「いや、今までのお前ら見ててそうじゃないって思わないからな?ミナコさんだってそうでしょう?」
「そうね、まだだったとは思わなかったわね。あえて突っ込まないようにしてたけど」
2人曰く、そういう関係だと思ってたからわざわざ言わなかったらしい。
確かに時々ヴィクトルがキスしてきたし、距離は近い方だと思ってたけどさ…。
「全日本で金メダルは最低条件なんだっけか」
「ヴィクトルが、それぐらい俺の勇利なら当然でしょ?って言ってくるから…」
「…良かったな、金メダル取れて」
「まぁこれぐらい取れないとヴィクトルの兼業は難しいでしょうねぇ…」
僕もそうだし、ヴィクトルもそうかもしれない。
今、隙をつくってしまってはヴィクトルの現役復帰とコーチ続投の兼業が非難される。だから、全日本・ロシアナショナルはお互い金メダルが必須なのだ。
ちゃんと全日本で金メダル取れたし、一足早く金メダルで競技復帰を飾ったヴィクトルに「当然だよね!」というお言葉をもらいました…。ちなみにミナコ先生はコーチ代理、西郡はトレーナーとして来てもらっている。
「それで?誕生日言ったの?」
「うん、ヴィクトルが長谷津に一旦戻ってきたらまた改めて直接言うつもりだけど」
「…1日帰るの遅らせたら?あんたたちだけ。博多辺りで。どうせプレゼント渡すんでしょ?」
「へ?…え、え」
「じゃあミナコさんと俺は一足早く帰りますか」
「そうね、そうしましょう」
えっ?ってなっている内にミナコ先生と西郡は勝手に決めてしまっていた。
しかも、気付いたらヴィクトルにも連絡取って言ってしまっていた。ヴィクトルもいいって言ってるらしいが、何故かミナコ先生にニヤニヤというかちょっと呆れた顔されたのが不思議である。
試合が終わった後はエキシビションだ。
今シーズンは「離れずにそばにいて」でずっと滑っている。ヴィクトルもエキシは「離れずにそばにいて」で滑っていた。
ファイナルから2週間もないに昨シーズンのプログラムを再度仕上げ直してナショナル滑るって言ってて、ヤコフコーチが今回は復帰で調整だけでも時間が必要なのに仕上げ直しは無茶だと怒っていた。
それでも、言うこと聞かないのは分かっているのか何だかんだヤコフコーチも最後は本当にダメだと思ったら昨シーズンと同様のプログラムにするからな!ってね。
僕も大丈夫かって聞いたんだけどヴィクトルは大丈夫、むしろこの衝動を早く滑って昇華したいと言ってたぐらいにやる気が見えたので、止めても無駄かなと…。ヤコフコーチが見てくれるし、本当にダメだと思ったなら止めるだろう。
「今シーズンのエキシはずっとコレでいくのか?」
「うん。ヴィクトルがこれでね!って」
「なるほどな」
「何がなるほどなのさ」
「…後で分かる」
西郡が目をそらしていて怪しい。そういえばミナコ先生もいつの間にかいない。
「そろそろお前の番だろ、行ってこい」
「あ、うん…ミナコ先生どこ行ったんだろ…」
「…トイレって言ってたからもう戻ってくるだろ」
「そう…じゃあ行ってくる」
僕とヴィクトルを引き合わせた「離れずにそばにいて」
4回転フリップが綺麗に決まったと同時に見えたのは、ミナコ先生ではなく客席から見えないようにしゃがんで顔だけ少し出していたヴィクトルだった。
そして、僕の滑りに合わせるようにリンクへ上がるヴィクトル、手を伸ばす。
照明が変わり、客席から驚きの声が聞こえる。僕もびっくりした。
「…ヴィクトル、好き」
恋人になってから恥ずかしくてあまり言えなかった言葉がすっと出た。
「勇利…愛してる」
ヴィクトルの嬉しそうに微笑む顔がとても綺麗だった。
「まさかロシアナショナルのエキシ終わった後にそのまま日本に来るなんて聞いてない!」
「ふふふ、驚いただろう?」
「そりゃね!ミナコ先生知ってたんでしょう!?」
「だって勇利を驚かせたいから内緒でリンクサイド入れるように手続きしてくれって言われたんだもの。手続きって言っても大体はヴィクトルが元々やってたけどね」
「ということは、元々ヴィクトルは勇利のエキシに出る気で進めてたわけか」
ミナコ先生は、博多でも1日泊まったら?とヴィクトルに話した時に言われたらしい。
西郡は今日エキシが始まる前にヴィクトル内緒で来るからとだけミナコ先生から聞いていて送り出しよろしくと頼まれたと。
「ミナコに任せるとはいえ勇利のコーチができないからね、せめてエキシに出て勇利が少しでもリラックスできたらいいと思ってね。ファイナルから続けてで疲れはどうしても出るからね」
「ヴィクトル…って、ヴィクトルもでしょ!大丈夫?」
「ああ、飛行機で寝たからね。このぐらいであれば大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「…大丈夫ならいいけど、無理はしないでよ?ただでさえ短期間で調整してるのに…」
「うん、大丈夫だよ勇利」
「…あーコホン。いちゃつくのは部屋に帰ってからにしてちょうだい」
「…勇利、周り見ろ」
と言われ見るとだいぶ注目されているようだった。ヴィクトルに気を取られてて気付かなかった…恥ずかしい。
ミナコ先生と西郡は一足早く長谷津に帰り、僕たちは博多で1日泊まった。
博多のホテルは多分だいぶランクが上の部屋に通された。スイートルームはさすがにやめた方がいいかなとヴィクトルは気付いたらしい。
「…落ち着かない」
今ヴィクトルはシャワーを浴びている。僕は先に浴びたのでヴィクトルを待っている。
バンケットの時からヴィクトルの視線が段々熱を帯びていてそわそわしていたが、ホテルの部屋に入り鍵を閉めるとがっつくようにキスされた。
勇利…と耳元で囁かれると腰が砕ける。実際力抜けて、ヴィクトルに笑われた…。
「…勇利、どうした?」
「わっ!…びっくりした…」
「そんなにびっくりしなくてもいいじゃないか」
ヴィクトルにまた笑われた…。
「…ヴィクトル、改めて誕生日おめでとう。過ぎちゃったけど…」
「いや、ナショナルがあったからね。勇利からおめでとうって電話で聞けたから。うれしかったよ」
「あ、はい…それで」
「うん?」
「誕生日プレゼントなんだけど………僕で」
「ん?」
「…誕生日プレゼントは、僕で!…もいい…?」
とても恥ずかしくて少し大きい声になっちゃったけど、ヴィクトル…?
「………勇利、覚悟しろ」
「うん…?」
よく見るとヴィクトルの目が笑ってなかった。え、ちょっと。
「…んっ…やだぁ…」
「だーめ。我慢するんだ、勇利」
「ゔぃくとるぅ…!やぁ…」
覚悟してと言った通り、ヴィクトルはもどかしいほどに僕の体のいたるところを触っていた。
すでに指2本は入っている、らしい。いちいちヴィクトルが耳元で2本入ったよ?って言うから…!
きもちいい、イキたい、きもちいい…頭の中はすでに快楽にのまれてしまっている。
「…勇利、入れるよ」
「ゔぃくとる…?……ああっ!」
「…くっ……」
あつい。少し苦しいけど気持ちいい。
「ゔぃくとる……きす、したい」
「っ…勇利、ああ」
ヴィクトルとするキスは恋人になる前からしていた軽いキスの時から気持ちが良かった。気持ちいいものなんだろうかと以前は思ってたけど、ヴィクトルとしたキスは好きだ。
少し落ち着いて動いていいって言ってからヴィクトルはがっつくように激しかった。初めてだったのもあって、前を触られながらはとても気持ちよくて。
「ぁあっ!あ、ああ!」
「勇利、気持ちいい?」
「んあ!…ぅん!」
辛うじて頷くとヴィクトルは安心したように顔を綻ばせた。
「勇利…俺の名前を呼べ」
「んん!…ゔぃく、とるぅ!」
「…っそうだ、おまえは俺のものだ。ずっと俺の傍にいろ」
こういう時のヴィクトルは普段と違って口調が荒くなるんだ…と頭のどこかで思う。
「あぁっ…も、う!」
「ああ……勇利っ」
「…―――っ!!」
「…っく!」
後から気付けば入れる時にいつの間にかスキン付けてるし、ヴィクトル慣れてるんだな…とちょっと落ち込みそうになった。
「勇利…大丈夫か?」
「………うん、大丈夫」
ただ終わって我に返って恥ずかしいだけだ。それはヴィクトルも分かっているらしく、少し笑いながらといった感じだった。
終わってからもヴィクトルの口調は少し荒いままだったが、僕だけだと思うと嬉しくてとてもかっこよかったので何も言わなかった。
しかし、この後立ちづらくチェックアウトの時間ギリギリまでのんびりすることになった。ヴィクトルは世話をやいてくれたりと甘い雰囲気で顔が熱くなったりとしたけど、ヴィクトルは喜んでくれたらしいので良しとしたい。
帰ってから真利姉ちゃんに少し複雑そうに呆れた顔されて、バレてそうで恥ずかしかった…。
「ヴィクトル」
「勇利」
バンケットが終わってお互いにシャワーを浴びてひと段落ついた。
勇利がふふっと笑っている。この笑い方は何かが嬉しいようだ。
「どうしたの、勇利?そんなに笑って」
「だって、嬉しいんだ。またヴィクトルとスケートができるってことが」
「俺も嬉しいよ。…ショート終わった後のあの絶望感に比べたら」
「うっ…ごめん…」
あの時は泣いてることすら最初は分からなかった。何を言われたのかすら。
それぐらいに勇利に引退する、と言われたことがショックだった。
「…絶望感?」
「…俺は競技者ではない自分が勇利を引き留めることはできないと絶望したんだ。俺はあの時にはもう引退する心積もりしていた。コーチとして勇利の傍にいたいって思っていた」
自分がまだ選手だったなら勇利の闘争心を煽ることができただろう。勇利は負けず嫌いだ。勝ちたいと、引退しないと言わせることができたかもしれない。でも今の自分はコーチだ。休養という形を取っているが、選手として同じ舞台に立っていない自分にできることはほとんどない。
最初は確かに復帰するつもりで勇利の休息時間に滑ったり筋トレなども最低限続けていた。でも、勇利と一緒に過ごし、滑っていく内に気持ちは変わっていった。迷いはあったが、決定的だったのはロシア大会でマッカチンのことがあり、勇利を置いて日本へ帰ったことだ。辛そうな勇利の傍にいれない自分がとても悔しかった。勇利の傍でスケートをしたい、そう願って俺は引退しようとした。ファイナルが終わった後に正式に発表するつもりだった。
「僕、知らなかった」
「…ねぇ勇利、勇利はどうして引退しようとしたの。あの時答えてくれなかったこと教えて?」
あの時、ショートが終わったその夜に勇利は何を思って俺に告げたのか。
「自分は引退して、俺には競技を続けろなんてよく言えるよね!?」
引退します―その言葉をすぐに理解することができなかった。
確かに引退までお願いしますとは言われた。でもそれがファイナルまでだなんて思いもしなかった。
俺が休養という形を取り、完全な引退をしていないのが仇になった。ファイナル終わった後に発表だなんて楽観的な考えをしていたからだ。引退を決めた時点で発表しておくべきだった。
勇利は俺が選手に戻りたいと思っていると考えている口ぶり、俺は勇利に何一つ伝えられていないこと、いろいろなことが頭の中でごちゃまぜになった。勇利は何故俺が怒っているのか不思議そうな顔をしていた。
「…ねぇ、勇利。何で?何で引退するなんて言うの」
「何でって…。元々ファイナルまでって言ってたのはヴィクトルだったでしょ?」
「確かにファイナルで優勝させるって俺言ったよ。でも、何でそれが勇利が引退するってことに繋がるの!?」
「………」
「勇利………分かった、フリーが終わったらそれぞれ自分で結論を出そう。俺がどうするかは俺が決める」
「………分かったよ」
知ってるよ、勇利。勇利はそう物分かりよさそうに言っていても心の中では絶対に決めてるってことぐらい。俺はどうしたら勇利を氷の上に引き留めることができるのだろうか…。
勇利は何を考え思い、俺に告げたのかを直接勇利の口から知りたかった。
「…僕は、ロシア大会でヴィクトルがいないと満足に滑れなくなっていたことに気づいたんだ。元々ラストシーズンだと思って、ヴィクトルと一緒にいれるのはファイナルまでだと思ってたから、全日本以降今の状態のままスケートを続けるのは無理だって…」
「…俺も、フリーの時傍にいることができなくてごめん」
「ううん、マッカチンのことがあったんだから、僕がしっかりしないといけなかっただけだよ」
「ラストシーズンって考えていたなんて知らなかった」
「僕、引退までお願いしますって言った…」
「…ラストシーズンだとかファイナルで引退だとかそういう意味には聞こえなかったよ」
そう、いつも勇利は大事なことは自分の中で昇華して言葉にしない。ラストシーズンをかけていたなんて一言も言っていなかった。人の事言えないかもしれないけど、勇利は言葉が足りない。
「えっと、ごめん?」
「…マリが以前、勇利は本当に大事なことは誰にも言わずに決めるって言ってたし、今回実感したよ」
「真利姉ちゃん…」
「勇利、本当にロシアに来てくれる…?いや…来い、それ以外認めない」
「行くよ。ヴィクトルと一緒にスケートするために」
「うん…ああ、ダメだかっこ悪いな俺」
「そんなことない!ヴィクトルはいつもかっこいいよ!」
今勇利にロシアに行かないなんて言われたら俺何するか分からない、それぐらい勇利が好きなんだ。
かっこいいって勇利はいつも言ってくれる。勇利もかっこいいよ、俺よりもね。
「…ねぇヴィクトル、気になってたんだけど、僕のコーチ続けてもらうのって…」
「勇利のコーチは本当に勇利が引退する時まで俺だけだから。その後も…ずっとずっと、傍にいろ」
フリーで勇利がラストの4回転フリップを決めた瞬間、もう一度競技者として勇利とスケートをしたいって思ったんだ。勇利がいないと俺はもう生きていけない、勇利が愛おしい。
「…うん、ヴィクトルもずっと僕の傍にいてほしい」
そう素直に言ってくれる勇利は恥ずかしそうに笑った。
「もうおまえがいないと生きていけない、勇利」
「…大袈裟じゃない?…あ、でも僕もヴィクトルがいないとダメかも」
「勇利…」
ファイナルが終わっている今、俺は勇利に顔を近づけ…
ファイナルが終わったこの夜、俺たちは恋人になった。
キスの合間に勇利をじっと見ながらする。勇利は目をぎゅっと閉じているが、徐々に顔が蕩けてきた。以前から軽いキスしている時から思っていたが、やはり勇利はキスが好きらしい。かわいい。
「ナショナルまで時間はそう多くはない。だから勇利、今は入れない。ナショナルが終わったら、必ず」
「………うん」
おそらく勇利は初めてだろうと思っていた通り、初めてだからお手柔らかにお願いします…と顔を赤くさせて言う勇利はとてもぐっときた。
「そのかわり…少しだけ触らせて…?」
「……あっ…んっ」
唇から下へ、首筋にキスをする。それだけで勇利の身体はビクッと反応する。
胸の頂を甘噛みする。普段なら少し痛いぐらいで終わるようなものも今の勇利には気持ちがいいのか反応がいい。
「ヴィクトル……」
「痛い?」
「ううん……えっと…」
「ふふ、気持ちいいんだね。よかった」
痛いとは言わなかったから、勇利としては痛くはないのだろう。恥ずかしくて言えないらしい。体を触りながらバスローブを脱がしていく。お腹や脇を触る度にビクビクさせる勇利に興奮する。
「…勇利、指入れるところまでしても?」
「えっ…と……」
「ダメ?こわい?」
「…こわ、くはないと…思う………ヴィクトルがしたいように、していいよ?」
「…勇利、俺を煽るものじゃないよ。…大丈夫、気持ちよくなるだけだよ」
「…あぁっ!…んんっ」
この様子だといけるか?と聞いてみると反応は上々だ。ナショナルが迫っている関係上、本当に今日はセックスまでするつもりはない。触り合いと指で少し慣らすところまではできたらしたい。しかし、したいようにしてもいい、だって?そんなこと言うものではないよ、勇利。試合が近くなかったらペロリと食べていたさ。
さきほどからやわやわと触っていた勇利のそれを強めに擦る。勇利とするために持ち歩いていたローションを手に取る。
「んっ…」
「…勇利、痛かったり苦しかったら言って」
窄みの周りを撫でて少し馴染ませる。勇利の様子を見ながら指を入れていく。
「…んんっ」
「勇利、苦しい?」
「…だ、いじょ、ぶ」
少し苦しそうではあるが、思ったより痛がってはいない。少しローションを足しながら中が慣れるのを待つ。
「…思ってたよりは大丈夫そうだね。少し動かすけど大丈夫?」
「うん…大丈夫だよ」
出し入れする度にくぷくぷと特有の音がしている。勇利を見ると少し辛そうだ。よく見ると、前がふるふると震えている。
「………勇利、前触ってほしい?そろそろイキそうだね?」
「…ぅん…あっ」
萎えていないところを見ると、勇利は中でも感じる体質かもしれないと思う。後のお楽しみといったところか。
指を抜くと、切なそうな顔をする勇利。ああ、食べたいな。
自分のモノを取り出し、勇利のモノと擦り合わせる。勇利はとても気持ちよさそうな顔をしている。勇利は初めてでこれだ、元々こういう快楽には弱い方なのかもしれない。そうなると心配だな。
「あぁっ…んぁ…!」
「…っく、勇利、イキそう?」
「んんっ!ゔぃくとるぅ…!」
「っ…ふふ、その蕩けた顔とてもいいね、かわいいよ勇利」
ぽけーと俺の顔を見惚れたように見る勇利は本当にかわいい。
「…あ、イくっ…あぁっ!」
「…っ!…」
ほぼ同時にイった。少し我に返ったのか顔を赤くさせていた。
「勇利、気持ちよかった?」
「………うん…ヴィクトルは…?」
「…とても気持ち良かったよ…ナショナル終わった後、楽しみだね…?」
この後、またシャワーを浴びる勇利のところへ乱入し、勇利が抵抗しないのをいいことにまたお触りをして少し勇利に怒られてしまった。ふふ、楽しみだなぁ。
エカテリンブルグ、24日午後11時57分。日本時間25日午前3時57分。
おそらく勇利は起きている。普段なら何も言わないが、今はお互いナショナルの試合の真っ最中だ。あまり感心はしないんだがな…。
『…ヴィクトル?』
「…こんな時間に起きてるなんて悪い子だね」
『睡眠時間はしっかり取ったよ?…ヴィクトルこそ大丈夫?』
確かに声からは疲れは見えない。勇利も現状は分かっているから、おそらく本当に大丈夫なのだろう。
「ああ、さすがに復帰戦ということでいつもよりインタビューが長くてね、ヤコフが止めてくれたけど」
『うん、明日まだフリーあるもんね。…ヴィクトル、誕生日おめでとう!』
やはり俺の誕生日のために起きていたのだろう、電話に出てから少しそわそわしていたから。自分の誕生日には淡泊なのにね?
「ふふっ、ありがとう、勇利。こうやって勇利に祝ってもらえてうれしい。フリーもがんばるよ。もちろん、勇利もショートがある」
『うん、僕もがんばる』
そう、今の厳しい状況でロシア大会の二の舞を演じるわけにはいかないのだ。
勇利は今日代表発表がある。まぁ勇利は1位だからね、代表確定だろうし大丈夫。
とロシアナショナルのエキシを控えた俺にミナコからメッセージが届いている。
『あんたたち博多辺りで1日帰るの遅らせたらー?勇利も満更じゃなさそうだし』
ほう、ミナコにお膳立てされているようだ。ここは甘えるかな。ああ、そうだ。
『は?エキシ終わったら日本に来るって?勇利に内緒で!?しかも、関係者手続きって…あんたエキシ出る気?』
『サプライズねぇ…。まぁいいわ。今度高い酒飲んでいきなさいよね!』
何だかんだミナコも協力してくれるのでありがたい。
やはり日本の飛行機はほぼ定刻通りだ。
会場へ急ぐ。会場で見つからないように着替えを済ませ、ミナコと合流する。
「勇利の送り出しは豪くんに任せてるわ。もうすぐ勇利の出番よ」
「ああ、ありがとうミナコ」
「前から決めてたんでしょ?手続きのこと言ったら聞いてるって言われたわ」
「そうだね、時差と飛行機の時間を計算するとギリギリで行けると思ったからね、根回しは前もってやっていたんだ」
「そう…。勇利に怒られても知らないわよ」
「勇利なら怒っててもそこまで怒らないと思うよ」
「ほんとあんたって…」
ミナコには少し呆れた顔をされた。
勇利には「離れずにそばにいて」を滑るように言ってある。
勇利もあまり感じていないかもしれないが、ファイナルの疲れが響いている可能性もある。
一緒に滑ればジャンプの量も減り、疲れは軽減できるのもあるが…俺が勇利と滑りたいのだ。
ヤコフにはエキシが終わり次第日本へ戻ると言ってあるが、かなり無茶なスケジュールをこなす関係上、ヤコフに本当に大丈夫かと何度も念押しされた。
俺としては昨シーズンのプログラムを短期間で再度仕上げ直すとはいえ、練習量としては勇利に付き合って滑っていただけあってそこまで心配する必要はないと自分では感じていた。
だから、まだ疲れはあるだろうがロシアナショナルを全てこなした後日本に戻ることもできると踏んだ。
そこでヤコフがスケジュールを完全に決めてしまう前に、日本のスケ連に連絡を取り、手続きを進めてほしいと依頼した。しぶしぶといった感じではあったが、承諾してくれたから感謝だね。
ヤコフにそのことを言うと、無茶すぎる!とこれまた怒られたが、俺としては自分の身体を客観的に見て行けると思ったからそうしただけなんだけどね?さすがに無理を通して日本へ行っては勇利に怒られて、ロシアに行かないなんて言われたら俺ちょっと何するか分からないし?
伸びやかに滑る勇利を、観客から見えないようにしゃがみながら見ていると勇利は4回転フリップを綺麗に着氷した。一瞬こっちを見て目を見開いていて俺に気付いた様子だ。
「またいちゃいちゃ見せられるのね…」
「…ああ、ミナコはバルセロナでも見たしね」
「そうか、俺だけ生で見てないのか…」
そう言いながら俺は氷上へと、勇利の傍へ。
俺と勇利を引き合わせた「離れずにそばにいて」
俺に手を伸ばす勇利の手を取る。
「…ヴィクトル、好き」
恋人になってから恥ずかしいのかあまり言ってくれなかった言葉を紡ぐ勇利。
「勇利…愛してる」
勇利の照れた顔が食べてしまいたいぐらいとてもかわいくてかっこいい。
「まさかロシアナショナルのエキシ終わった後にそのまま日本に来るなんて聞いてない!」
「ふふふ、驚いただろう?」
「そりゃね!ミナコ先生知ってたんでしょう!?」
「だって勇利を驚かせたいから内緒でリンクサイド入れるように手続きしてくれって言われたんだもの。手続きって言っても大体はヴィクトルが元々やってたけどね」
「ということは、元々ヴィクトルは勇利のエキシに出る気で進めてたわけか」
そうは言っても、勇利だってぷりぷり怒りつつも嬉しいと思っているのなんてお見通しだよ。
「ミナコに任せるとはいえ勇利のコーチができないからね、せめてエキシに出て勇利が少しでもリラックスできたらいいと思ってね。ファイナルから続けてで疲れはどうしても出るからね」
「ヴィクトル…って、ヴィクトルもでしょ!大丈夫?」
「ああ、飛行機で寝たからね。このぐらいであれば大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「…大丈夫ならいいけど、無理はしないでよ?ただでさえ短期間でプログラム仕上げてるんだし…」
「うん、大丈夫だよ勇利」
「…あーコホン。いちゃつくのは部屋に帰ってからにしてちょうだい」
「…勇利、周り見ろ」
ふふ、俺としては勇利は俺のだよと牽制できていいんだけどね。でも、やはり勇利は恥ずかしかったらしい、顔が赤くなっていた。そのおいしそうな頬食べたいね?
ミナコ先生とタケシは一足早く長谷津に帰り、俺たちは博多で1日泊まった。
スイートルームを取りたかったが、勇利が後で何か言いそうだなとワンランク下の部屋を取った。
勇利としてはそれでも豪華だと思ったようだが、スイートルームよりかはましかと思ったらしい。
「…ああ、やっとだ」
やっと勇利と繋がることができる。先に勇利にシャワーを浴びさせたのは、俺が先に浴びてしまっては、勇利がシャワーをする前に襲ってしまいそうだからだ。そわそわしている勇利に怒られてしまうからね。まぁ、ホテルの部屋に入った途端に少々がっついてしまったが。キスで腰が砕けた勇利もかわいかったけどね。
シャワーから上がると、そわそわしつつも律儀にベッドの上で正座をする勇利がいた。
「…勇利、どうした?」
「わっ!…びっくりした…」
「そんなにびっくりしなくてもいいじゃないか」
少し緊張しているらしい。ベッドに腰掛けつつ、落ち着かせる。
「…ヴィクトル、改めて誕生日おめでとう。過ぎちゃったけど…」
「いや、ナショナルがあったからね。勇利からおめでとうって電話で聞けたから。うれしかったよ」
「あ、はい…それで」
「うん?」
「誕生日プレゼントなんだけど………僕で」
「ん?」
んん?もう一回言ってほしいな、勇利?
「…誕生日プレゼントは、僕で!…もいい…?」
「………勇利、覚悟しろ」
「うん…?」
今自分の目が笑っていない自信があるよ。お前は本当に俺を煽ってくれるね。
「…んっ…やだぁ…」
「だーめ。我慢するんだ、勇利」
「ゔぃくとるぅ…!やぁ…」
蕩けてきている勇利は舌足らずに俺の名前を呼ぶ。
勇利がもどかしく感じるように、勇利の体のいたるところを触る。窄みに指を入れながら勇利の様子を見る。指2本目を入ったことを耳元で囁くと、とてもいい声で鳴いたな。今も気持ちよさそうに鳴いている。
「…勇利、入れるよ」
「ゔぃくとる…?……ああっ!」
「…くっ……」
勇利の中熱い。勇利の様子を見ながら奥へと。
「ゔぃくとる……きす、したい」
「っ…勇利、ああ」
キスしている時の勇利の顔はとても艶やかだ。キスをしながら中が馴染むのを待つ。勇利がじれったそうに動いていいよ…?と言われると、がっついてしまいあまり優しくできなかった。勇利のを触りながら激しくすると勇利はとても蕩けた顔をしていて、気持ちいいと表情が言っていた。
「ぁあっ!あ、ああ!」
「勇利、気持ちいい?」
「んあ!…ぅん!」
ああ、そんなかわいい顔をして…。
「勇利…俺の名前を呼べ」
「んん!…ゔぃく、とるぅ!」
「…っそうだ、おまえは俺のものだ。ずっと俺の傍にいろ」
終わった後、勇利が覚えているかは分からないが、すでに勇利は俺のだ。誰にも渡さない。勇利が嫌だって言っても離してやらない。ずっと、一生俺の傍にいろ。
「あぁっ…も、う!」
「ああ……勇利っ」
「…―――っ!!」
「…っく!」
終わった後体を拭き、包まる勇利に話しかける。恥ずかしいのだろう。
「勇利…大丈夫か?」
「………うん、大丈夫」
やはり初めてというのもあり立ちづらいらしく、勇利を抱えてシャワーを浴び直す。簡単に抱えられてしまったのが悔しいらしい勇利は少し拗ねていた。拗ねててもかわいいね。
ルームサービスで朝食をとり、チェックアウトの時間まで勇利といろいろな話をしながらのんびり過ごした。
長谷津に帰ると、マリに少し睨まれてしまった。んー…まぁミナコたちより1日遅らせたからバレてるだろう。
2018.12.24
2018.12.25 ヴィクトル・ニキフォロフさんWEBお誕生日会