想いの行く末


分かってる。
ジュードが好きなのは、ミラだってこと。
でも、想うことだけは許してね、ジュード。


「はい、もう大丈夫だよ、ミラ」
「ああ、ありがとう」

先程まで、この辺りの森じゃ結構強い敵と戦っていた。
そして、レイアやエリーゼは仲間の怪我を治したりしていた。
そう、ちょっとした油断だったのだ。

「…レイア!危ない…!」
「へ?」

見通しの悪い森だ。魔物が他に隠れていてもおかしくない。
ジュードを振り返ろうとした時、ジュードはレイアを庇うようにして、茂みに隠れて見えなかった崖へ落ちた。

「ジュード!」


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「…う、ん……」

レイアは、所々痛い体をゆっくり起こした。
周りを見渡すと、自分より怪我を負っているジュードが気絶していた。

「ジュード…!」

傍に寄って、大怪我がないか確かめる。
幸い外面は掠り傷程度だが、内面的な怪我は分からない。

「……ん……う…」
「ジュード!大丈夫!?」
「……レイアこそ、大丈夫…?」
ジュードはゆっくり体を起こし、苦笑しながらレイアに言った。
体を起こせるということは、内面的怪我はほとんどなかったということなのだろう。

「馬鹿!私よりジュードは自分の心配しなさいよ!」

自分のちょっとした不注意でジュードが怪我をしたのだ。
レイアの目は少し潤んでいた。

「僕は大丈夫だよ。レイアは本当に大丈夫?」
「…うん、大丈夫。ジュードはちょっと寝てて。治すから」
「え?でも、レイアは…」
「ジュードの方が重症なの!おとなしく寝てて!」
「…うん」

ジュードはあまり納得してなさそうだが、おとなしくレイアの言うとおりにした。
レイアは、言いなれた詠唱を唱えて怪我を治した。

「はい、これでほとんど大丈夫だよ」
「ありがとう、レイア。…レイアは?」
「え?うん…」

レイアは自分にも治癒術をかけた。
あらかた体の傷は治せたので、レイアはどうするかをジュードに問いかけた。

「僕達はあまり動かない方がいいと思う。2人だけだし、下手に動くと皆と合流できなくなるかもしれないからね」
「うん、何回か来てる場所だから大丈夫だよね…」

レイアは目の前にいるジュードを見て、急に2人きりであることを意識し、顔を少し赤くして俯いた。
ジュードは幼馴染としか思ってないだろうが、レイアはそうではないのだ。
レイアも女の子。好きな男の子と2人きりというのはやはり恥ずかしいものだ。

「レイア?どうしたの?」
「…え!?ううん、何でもないよ!」
「そう?ちょっと顔赤いね…。本当に大丈夫?熱とかない?」

ジュードはそう言いながらレイアに近づき、おでこをくっつけた。
ただ、レイアが心配で熱を測ったのだろうが…。

「ジュ、ジュード…!?」
「うん、熱はない。でも、さっきより顔赤いし、横になってたら?」
「え、いや、熱とかそういうのじゃなくて…!」
「え?」

段々顔が真っ赤になるレイアとは対称的に、ジュードはきょとんとした顔をしていた。
その顔を見たレイアは、自分は何慌てているんだろうと冷静になった。

「あ…うん、本当に、何でもないよ…」
「レイア…?」

馬鹿みたいだと思った。
自分は何を期待してるんだろう…。
ジュードは自分を幼馴染としてしか見てない。
それなのに、自分1人だけ慌てて…。
レイアは泣きそうになって俯いた。
「…レイア」
「……何?ジュード」
「何かあった?ここ最近ちょっとおかしかったから…」
「え?…そんなことないよ。別にいつも通りだよ?」
「レイア、1人で抱え込むことが多いから心配なんだ」

「……ジュードはさ。…好きな人とか、いるの…?」
「え…?」

ジュードは少し驚いた顔をしていた。
この会話からこんな質問がくるとは予想しないだろう。
それでも、ジュードは答えてくれた。

「……いるよ。」
「…ふーん。ねぇ、どんな人?」

内心やはりショックだった。
もう、泣きそうだった。
レイアは、ちょっと顔を俯いて顔を見られないようにした。
泣きそうな顔をしている自分を見せたくなかった。

「…強くて優しくて…厳しくもあるかな…。自分のことを思ってくれてるんだって感じる」
「……」
「でも、僕は役に立ってるのかなって、時々思う。」
「……大丈夫だよ。ミラは、ジュードのこと頼りにしてるよ?」
「…え?」
「だって、結構ジュードのこと気にかけたりしてるし…」

レイアは、それ以上聞きたくなくて捲くし立てるように言った。
もう、限界だ。

「ごめん、ちょっとその辺見てくるね!」

レイアはそう言って、ジュードに背を向けて走ろうとした。
しかし、走ろうとしたレイアの手首をジュードが掴んだのだ。
顔を見られないように背けながらレイアは手を離してと言った。

「…何?皆この辺に来てるかもしれな…」
「レイア」

それでも離さないジュードにそう言うと、言葉を遮られた。

「…何を勘違いしたのか分からないけど、僕が好きなのはミラじゃないよ」
「……」
「僕が好きなのは…」

ジュードは、何を言おうとしているのだろう。
レイアは、こんな時なのに頭の中は冷静だった。


「レイアだよ」


「……え?」

レイアは、思わずジュードの顔を見た。
ジュードは、少し微笑んでいた。


「レイア、好きだよ」


「ジュード…」
「レイアは…?」

ジュードは、少し不安そうな顔をしてレイアを見つめていた。

「…わ、私は…!」


「好き!」

「ジュードの事、大好きだよ…!」


「レイア…」

2人は互いに顔を真っ赤にしていた。
少しの沈黙を置いて、レイアはジュードに抱きしめられた。

「ジュー…ん!」

ジュードの顔を見ようとしたレイアは、キスされた。
離れると、ジュードは照れくさそうに微笑んでいた。

「好きだよ、レイア」
「…うん、私も好き、ジュード」

互いに恥ずかしそうに、幸せそうに笑っていた。


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「…いつまであのイチャイチャ見とかなきゃいけないのかね~…」
「そうですね…。そろそろいいかと思うのですが…ようやくくっつきましたね」
「キスしたよー、シュードとレイアー」
「…う、ん…」
「ほう。あれが恋人というものか」

皆、いい雰囲気の中に飛び込むのは気が引けて、茂みに隠れていた。