悪夢


雪は嫌いだ。
あの日を思い出してしかたがない。
雪が視界に入るのも嫌で疲れたと部屋に引きこもりカーテンも閉めてベッドに寝転ぶ。

来たくもなかったフラノールに着いたのは今日の昼過ぎ。それからずっと引きこもり、ぼーとしながら荷物整理をする。しかし夕方になるとやることがなく、寝転んでいるといつの間にか寝てしまった。



―お前なんて産まなければよかった。

―神子さまなんて大嫌いですわ!


やめろ、やめてくれ…!
俺が死ねばセレスに神子を譲れる。あと少しで、俺は―



「ゼロス!」

ハッと目が覚めた。目の前には焦った表情のロイドがいた。

「ゼロス、大丈夫か?うなされてたぞ」
「…あー…ちょっと、夢見が悪かっただけだーて」
「………」

納得いかない顔をしたロイドは俺をじーっとしばらく見て、ため息を吐いた。

「寝言…」
「へ、寝言?」
「寝言で母上って言ってた」
「…っ!」
「お前が話したくないなら今は聞かないけど、なんでもないって誤魔化すのやめろ」
「………」

ロイドは不機嫌そうに俺を睨みながら言った。余程変な顔をしていたのか、「晩飯できたってさ。ちょっと落ち着いたら来いよ」と言って俺の頭をくしゃっとして部屋から出て行った。

いつか、ロイドに話すつもりでいた。もうここで話すのもいいだろうか。ロイドは変なところで勘がいい。おそらくこのままでいると何もかも話せって言われるかもしれない。
とりあえず、晩飯はいつも通りに振舞わなきゃいけねーのは確かだ。あの話は貴族の間じゃ有名だからおそらくリーガルの野郎は気づいてるだろうけどな。

「…もう少しだけ」

迷わせて