眠れぬ夜


「また、寝れないんですか?」

ハッと横を見ると、ジェイドがこちらを向いていた。
寝ていると思っていたが、そうではなかったらしい。

「ごめん、起こしちゃったか?」

ただでさえ、強行軍なのだ。
自分のせいで起こしてしまってはいけない。
ジェイドには俺の考えが透けて見えるのか、眉を顰めた。

「ええ…あなたが魘されている頃に」

ジェイドは体を起こして、俺の方に向けて言った。
やっぱり、自分のせいで起こしてしまったらしい。

「ごめ…」
「ルーク」

ジェイドは少し強めに俺の名前を呼んだ。
え?って思った時には、俺はジェイドに抱きしめられていた。
ジェイド?

「あなたは無理をしすぎです。寝れなくなったら私に助けを求めればいいんです」
「でも…」
「迷惑だなんて思いません。むしろ、もっと頼ってほしいぐらいです」

ジェイドは少し悲しそうな顔をして、ぎゅっと俺を抱きしめた。
いつもつけている香水の香りがほんのりする…。

「…あったかいな…」
「そうですか?」
「うん…。ジェイドのにおいだ…」

俺はもっと堪能したくて抱きしめ返した。



「少し、落ち着きましたか?」
「うん。ごめんな」

ジェイドは俺が謝ったら、少し苦笑した。
何でだろう。俺、何か変なこと言ったかな…?

「…私は、もっと別の言葉がほしいのですがね…」

俺は、ジェイドが苦笑していたわけをなんとなく理解した。

「うん、ありがと!」

…あれ?ジェイド?

「…その笑顔、反則です…」
「え?」
「いえ、何でもありません…。そろそろ寝ましょう」

よく聞き取れなかったけど、ジェイドの顔が少し赤くなってたのは見間違えかな?
そう思いながら、結局分からないまま俺は寝てしまった。

「…好きですよ、ルーク」

だから、ジェイドがそうつぶやいてた事を知ることはなかった。