泣けない
「はぁ~…。」
溜息をついているのは、アメストリス国の国軍大佐として有名なロイ・マスタングだった。
「大佐。溜息を吐いているくらいなら書類を早く片付けて下さい。」
そう言ったのは同じく国軍中尉のリザ・ホークアイであった。
「だがね…。鋼の~早く帰ってきたまえ~。」
(…私、何でこんな人の後について行こうと思ったのかしら。)
翌日。
バーン!
「大佐ー!報告書!」
と言葉と共に鋼の錬金術師、エドワード・エルリックが入ってきた。
「兄さん!ドアは静かに開けようよ!」
その後にエドの弟のアルフォンス・エルリックが入ってきた。
「君達…もう少し静かに入れないのかね?」
「いいんだよ!」
「もう、兄さんったら!」
「…鋼の、報告書。」
「…ほい。」
(いつもより少し元気ないな…。)
「?何だよ。」
「…いや。そうだ、鋼の。夕食、一緒に食べないか?」
「…大佐、正気か?」
「私はいつでも正気だ。」
「大佐。明日の朝まで兄さんを貸すので兄さんを大佐の家に泊めてもらえませんか?」
「ああ。いいよ。」
「はぁ!?二人でなに勝手に話決めてんだよ!?」
「ははは。アルフォンス君がいいと言ってくれているんだ。いいじゃないか。」
「俺はよくない!!!」
大佐と一緒に夕食を食べて…そして俺は今…。
「鋼の、着いたぞ。」
「…ここ、本当に大佐の家か?」
(大佐という地位ですごいでっかい家だな…。)
「まず、シャワー浴びてこい。」
「へいへい。」
「ったく。何なんだよ。」
「大佐ー。あがったぞー。」
「…。」
「大佐?」
ガバッ!
「たたた大佐!!??」
ロイがエドに抱きついたのだ。
「…泣けないのなら、今泣け。」
「!!」
「アルフォンス君がいるから泣けないのだろう?」
「…。」
「私は何も見てない。いいから泣け。」
「…ヒック…う…うわわわわんんん!!!」
「落ち着いたか?」
「…ああ。」
「号泣だったな。」
「誰にも言うなよ。」
「…言わないよ。」
「…。」
「鋼の?」
「スー、スー…。」
「もう、寝たのか。」
まだ、15歳なのにこんなに一人で抱え込んでいたのか…。
私が、癒せられればいいのだが…まぁこの性格じゃ無理かもしれないな…。