*「上機嫌の理由」の続き

最近お兄ちゃんは上機嫌だ。
その理由は、最近できたであろう恋人(ただし男)。
私は偏見も何もない。あのお兄ちゃんだから。
気まぐれお兄ちゃんに振り回される彼は可哀想である、と同情はする。
まぁ両親も特に何も言わないだろう。彼に、お兄ちゃんでほんとにいいのかとか聞きそうな気がするけど。


お兄ちゃんは、昔から頭のいい人だった。
私も成績上位に入ってるから自分でも頭がいいと思ってるけど、お兄ちゃんは普通の"頭のいい人"ではない。
私が見る限り私が物心つく頃からすでに、つまらないと思っている節があった。モテてたりとそれなりに普通の生活をしていたが、それはお兄ちゃんなりに普通に振舞うべきだと考えていたからそう生活してたんだろう。
段々変わってきたのは9年ぐらい前だったか。お兄ちゃんは日頃の退屈さを埋めるためか、オンラインゲームをやり始めた。それからお兄ちゃんもそれなりに楽しく過ごせてるんだって知ってほっとしたものである。

それで、最近またお兄ちゃんが変わった。お兄ちゃんの上機嫌は長続きすることはほとんどないが、ゴールデンウィークの頃からずっと上機嫌。今でもお兄ちゃんを気にかけている両親も嬉しさがありながらも少し困惑はしていた。私だって気になったけどお兄ちゃんははぐらかすしねー…。

そんなゴールデンウィークから約1ヶ月経ってるわけですが。城鐘さんの様子を見る限り、それなりにお兄ちゃんの元へ来ているんだろう。だってね、明らかにお揃いのマグ使ってるし城鐘さんも慣れたっていう感じだもん。あしらい方とかさ。
でもね。いくらさっき恋人だって言ったとはいえ「玲衣には言ったんだから別にいいだろう…？」とか「あ、玲衣はそっちのお菓子で」とか言って城鐘さんの腰に手を回すのは、さすがに私の前ではやめよ？城鐘さんだって私の前でっていうのは恥ずかしいだろうから…。

「ええと、待たせてすみません」
「いえ、こちらこそ兄がすみません」
「私は別に何もしていないよ？」
「………」

城鐘さんはお兄ちゃんを睨んだ。しかし、この様子だと結構付き合いがありそうな感じだが一体いつ出会ったのだろうか。ゴールデンウィーク前はそんな素振は一切なかった。お兄ちゃんに関して大体分かる私でさえ何も感じなかったのだから、ゴールデンウィーク中に何かあったのだろう。

「…兄が迷惑をかけたら遠慮せずズバッと言って大丈夫ですから」
「え、ズバッっと…？」
「玲衣はひどいな」
「…城鐘さんに逃げられても知らないよ」
「………」
「そこで黙らなくても…僕は別に逃げませんって」

さすがのお兄ちゃんも城鐘さんに逃げられるのは嫌らしい。ここまでお兄ちゃんに気に入られていると何としてもお兄ちゃんの傍にいてくれるとありがたい。私だってお兄ちゃんに幸せになってほしいもの。

「それで、忘れ物はあった？」
「うん、あったあった」

なんかのんびりな雰囲気になったが、なれそめを聞いていいものかどうか。とりあえず・・・。

「城鐘さんはお兄ちゃんと付き合ってるんですよね」
「えっと…」
「付き合ってるよ」
「………はぐらかしたりとかしてくださいよ…」
「はぐらかすっていっても、玲衣は分かってて聞いてるから意味ないよ？」

確かに断定済みだけど一応聞いておくべきだと思ったから聞いたのだ。その時、お兄ちゃんはお手洗いに行くと言って席を外した。うんうん、さすがお兄ちゃん察しがいい。

「…僕、男だけどいいんですか？」
「んー…私はそういうのより、お兄ちゃんが幸せならどうでもいいんです」
「……どうでも…」
「ほら、お兄ちゃんって普通じゃないでしょう？」
「あー…確かに普通じゃないですね」

城鐘さんがお兄ちゃんのことを理解しているということがうれしかった。みんなお兄ちゃんの表面上のことしか見ないから、私は全部じゃなくてもお兄ちゃんを理解してくれる人がいいと思ってた。

「だから心配だったんです。どこか諦めた感じが不安で…でも城鐘さんに会ってからですかね。お兄ちゃん今までより楽しそうなんですよ」
「…そうなんですか？」
「ええ。城鐘さんは…お兄ちゃんのこと好きですか」
「………好きですよ。子供っぽいところとか面白がってからかってくるところも…全部好きなんです」
「よかった。…お兄ちゃんのことよろしくお願いします」
「…はい」

城鐘さんがお兄ちゃんのことが好きだと言っている時の顔が穏やかどこか愛おしそうで、ああこの人だからお兄ちゃんは好きになったんだって理解できた。

そしてその後タイミングよくお兄ちゃんが戻ってきて、多分私たちの会話聞いてたんだろうと思う。何か機嫌がいいですね？ってお兄ちゃんに聞いてるから城鐘さんの様子では気がついてなさそうだけど。お兄ちゃんはまた城鐘さんの腰に手を回してイチャコラしてる。

とりあえず、リア充爆発しろ (ただしお兄ちゃんだけ)