眠り


「……-ロード。…ミロード、起きてください」
「…ん、三佐?」

少しなら大丈夫だと寝たが思いの外寝てしまったのだろう。
「ミロード、マリエールさんがいらっしゃってますが…」
「ああ、何かな?」

クラスティは三佐からマリエールに視線を移したが、マリエールは少々複雑そうな顔をしていた。
「えっと…クラスティ、シロ坊は…」
「…ああ、疲れていたみたいなので寝てます」
「いや、そうやのうて…」
マリエールの「何でシロ坊がクラスティの膝の上で寝てるのか聞きたいんやけどなー…」という視線をクラスティは受け止め、シロエを起こすことにした。

「シロエくん、ちょっと起きてくれないかな」
「……う~……んん」

シロエは唸っただけでまだ起きない。
クラスティはそんなシロエを見ていたが、三佐が少し目を丸くしたことには気が付かなかった。

「シロ坊~起きて~!」
「マリエールさんが困ってますよ、シロエくん」


「……ん~…うるさいですよ、従兄さん…」

一瞬の間が空いて

「…え、え?シロ坊?」
「………」

三佐とマリエールはシロエの発言で驚いている。
今ここに男はシロエ以外にクラスティしかいない。シロエの「にいさん」はクラスティに向けて言ったことになる。

「…あー…シロエくん、完全に目を覚ました方がいいと思うよ」
「…え、何が…?……………え」

シロエは完全に目が覚め、クラスティの面白がっている顔を見て、近くにいる三佐とマリエールを見た。

「…えっと…シロ坊?どういうこと、なん?」
「お二人はどのようなご関係で?」

「………」
「今回はシロエが悪いね…」

言うつもりなかったことを自分が言ってしまったことに茫然としてしまったシロエにクラスティが追い打ちをかける形となった。

もともと、クラスティ自身は隠すつもりはなかった。ただシロエが隠したがっているためそれに従っただけ。

「それで?ミロード、シロエ様、どういうことでしょうか?」
「…もしかして、リアルで兄弟なん…?」

シロエがあまり言いたくないという顔をしたためか、クラスティは特に隠さずに言った。

「私とシロエはリアルで従兄弟なんですよ」
「ちょっと!」

シロエが少し睨むがクラスティは涼しげな顔をしていた。

「従兄弟?」
「ああ、だからですか」

きょとんとしたマリエールと納得したような三佐を見て、シロエは完全に諦めることにした。自分の発言でこうなったのだから仕方ないと言い聞かせて。

「誰にも言わないでくださいね。言うつもりなかったので」
「私としては別にバレてもよかったんだが」
「従兄さんはいいかもしれませんけど、僕が嫌なんです!」
「そこまで嫌がることかい?」
「…自分の性格自覚してますよね?」

シロエは嫌そうな顔をクラスティに向けて睨んだ。

「…仲いいんやねーシロ坊とクラスティ」
「意外ですね」

と言いつつ、三佐はシロエとクラスティの関係がただの従兄弟なのだろうかと少し疑った。
今までクラスティはシロエに興味を向けてはいたが、あそこまで優しい目は向けていなかった。
関係がバレたから隠す必要がなくなったと考えたのか、もしくは…。

「…ミロードとシロエ様は従兄弟という割には距離が近いですね」
「え、そやろか」

「まぁ距離は近いのは当たり前だろうね」
「…ちょっと従兄さん?」
「それは何故でしょうか」


「…私とシロエが恋人関係だからだよ」


「従兄さん!!!」

従兄弟とはバレても恋人関係であることはバレたくなかったシロエにとってはマリエールと三佐の反応を見るのが怖かった。

「…へ?」
「ああ、やっぱりそうですか」

三佐は納得したような感じで特に何か思うことはないようだった。一方、マリエールはというと…。

「シロ坊…なんでそんな大事なこと言ってくれへんかったん!?」
「…え?いや…だってあまり表に出すべきじゃないでしょ…?」
「…うちは、シロ坊を理解してくれる人がおってよかったと思てるよ?」
「……マリ姐…」

うれしそうにほほ笑むマリエールにシロエはちょっとうれしくなった。



「…そろそろ2人とも離れないかな」
「…ミロード、それはマリエールさんに嫉妬しているんですか?」
「………」
「素直になった方がよろしいかと」

クラスティと三佐がそんな会話をしていることはシロエもマリエールも気が付いてなかったが。